アトピー性皮膚炎の湿疹に数種の外用剤を塗布する場合、その塗布順序が気になるでしょう。特に患者さんの質問として多いのが、ステロイドを塗るのが先なのか、それとも保湿剤を塗るのが先なのかということです。以前、何人かの皮膚科の先生に同様の質問をさせていただいたことがあるのですが、その時は、「ステロイドを先に塗った方がよいのではないか。」とお答えする先生の方が多いでした。その理由としては、「保湿剤の上からステロイドを塗ったら、ステロイドの効果が低下する。」というものでした。しかし、ステロイド外用薬の上から保湿剤を重ねて塗る場合、ステロイドが患部以外に伸び拡がってしまうのでよくない、と問題視する先生もいました。
　結論としては、よくわかっていないというか、どちらが先でもよいというかそんな感じかと思います。私の場合は、症例によって指導を使い分けています。乳児などではまず全身に保湿剤を塗り、その後で湿疹部位にステロイドを塗る方が簡単かと思います。しかも、この順序じゃないと、「入浴後10分以内に保湿剤を塗りなさい！」なんて言っても無理です。幼児期以降の重症例の場合は、先に患部にステロイドを塗り、その上から保湿剤を重層してもらうことが多いです。年齢が大きくなってくると体表面積が広くなるので全身に保湿剤を塗ることが難しくなってきます。そうするとどうしても患部（湿疹が出ているところ）中心の塗り方になってくるのです。
現時点のエビデンス（科学的根拠）からは、塗る順番はどうでもいいような気がします。それよりも何よりも、「しっかり塗る」ということの方が重要でしょう。外用薬がしっかり塗れていない患者さんが多く、その方が問題だと思います。外用薬の塗布回数や塗布量が不十分なのです。